最後のロンドン、最後のコンサート

ポルトガルから帰国後は、3日間で論文の「結論」を書いて急いで提出し、その翌日に最後のチュートリアルを終了しました。この「最後のチュートリアル」についてはまたの機会に書くとして、今回は片付けの合間を縫って行った、最後のロンドン旅行について書きます。

僕の住んでいるレミントン・スパ(昔ヴィクトリア女王が保養地として好んだ場所で、正式には「ロイヤル・レミントン・スパ」と言ったりもする)からロンドンまでは電車で約一時間半ほどしかかからないので、普段は日帰りで行くことが多いのですが、今回は最後ということで、ホテルを予約して一泊の予定で行ってきました(結局終電を逃して、急遽もう一泊することになりましたが)。

イギリス出発はバーミンガム空港からなので、これがひとまず最後のロンドン滞在となります。8年前に初めてイギリスに来て以来、芝居やコンサートに行ったり、あるいは学会に行ったりと、振り返ってみると本当に何度も足を運びました。普段ウォーリックの田舎でのんびりすごしている身には、時々こうやって喧噪の中に身を委ねて刺激を受けることが、自分の中でバランスを取るために大切な行為だったような気がします。

最近ではめっきりと少なくなりましたが、ロンドンに来る一番の理由はオーケストラのコンサートを聴くことでした。ヨーロッパの中心でもあるロンドンでは、毎日のように一流オーケストラの演奏会が行われ、それが日本では考えられないくらい手頃な値段で聴くことが出来ます。

今回はイギリスでの最後のコンサート体験、ということでプロムス*1へ行ってきました。プログラムは以下の通り。

Johan Reuter baritone, BBC Scottish Symphony Orchestra, Marc Albrecht conductor

最初にハイドンのテーマをもとにブラームスが作曲した曲を演奏し、その後ブラームスのテーマをもとにGlanertが作曲した曲を演奏する、という構成になっています。ずっとイギリスに住んでいながらBBCスコティッシュの演奏を聴くのはこれが初めてでした。イギリスのオケらしいアクセントのはっきりした輪郭のある演奏。ただ、ロンドン・シンフォニーほど強烈でもなく、きれいにまとまった感じで、ややおとなしい印象を受けました(会場が大きすぎるせいかもしれませんが)。

実は、コンサート自体よりも、その前に起こった出来事の方が衝撃的でした。

コンサートの前に、会場の外で誰かに写真を撮ってもらおうと探していると、一人で何か考え事をしながら歩いているイギリス人らしき男性が目にとまりました。写真を頼もうかと思いながら、ちょっと怪しいような気がして、結局躊躇してあきらめ会場に行こうとすると、その男性が他の見知らぬ(と思われる)女性に声をかけられ歩きながら話をしています。

何となくその女性の顔が、憧れの人にあったような、上気した顔をしているので、もう一度その男性の顔をよく見ると、なんとあのサイモン・ラトルでした!それにしても、あんまりフツーに歩いていて全く気付きませんでした。以前もプロムスのコンサートの直前にピアニストの内田光子さんとすれ違ったこともありましたが・・・さすがロンドン。

そう言えば、イギリスに来て初めて聴いたコンサートは、サイモン・ラトル指揮(当時はバーミンガム・シンフォニー・オーケストラ)のマーラー(7番)でした。イギリスのコンサート体験の最初と最後にラトルの顔が見れてなんだか不思議な体験でした。

*1:プロムスについてはウェブサイトを参照。BBCラジオでライブ中継をやっているほか、インターネットでもオンデマンドで演奏を聴くことができます。http://www.bbc.co.uk/proms/