Life is ...
2003年9月19日(過去の日記)
「人生はビスケットの缶だと思えばいいのよ」
僕は何度か頭を振ってから緑の顔を見た。
「たぶん僕の頭がわるいせいだと思うけれど、ときどき君が何を言っているのかよく理解できないことがある」「ビスケットの缶にいろんなビスケットがつまってて、好きなのとあまり好きじゃないのがあるでしょ?それで先に好きなのをどんどん食べちゃうと、あとあまり好きじゃないのばっかり残るわよね。私、辛いことがあるといつもそう思うのよ。今これをやっとくとあとになって楽になるって。人生はビスケットの缶なんだって」
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もう間もなくイギリスへ戻って博士課程の勉強を始める時期になりました。
今現在自分が立っている場所、これから進もうとしている道、そういった「現在」と「未来」に関しては自分の頭の中で非常にクリアに整理されていて、疑問に感じることはあまりありません。
それでも、いったん「過去」に目をやってみると、うまく整合性が取れてないような気がして不思議な感情が湧いてきます。
一本の道がスーッと一直線につながっているというよりは、あっちに行ったりこっちにいったりして、ぐるぐるまわりまわって来たイメージが頭に浮かびます。
というのは、初めてイギリスに留学した5年前、大学を卒業して会社に入ったとき、留学を決意して会社を辞めたとき、そしてイギリスの修士を終えたときでさえ、そのいずれにおいても自分がイギリスの大学院で博士をやるということは全く想像できなかったからです。われながら、ことの急転直下ぶりに感心してしまいます。
日本の大学であれ海外の大学であれ、博士課程に行く人というのは、その大半がわりと早い時期に自分の進む道を意識し、できるかぎり回り道をしないよう進級していくのでしょう。その意味では自分はなんと回り道をしているのか、と思うときもあります。
その一方で、「無駄」や「回り道」に思えることが仮になかったとすれば、今現在の「自分」というものもなかっただろうということも強く感じます。
好きな人、あんまり好きじゃない人、苦労させられた人、自分と比較的深く関わったあらゆる人の存在が一つでも欠けたら、また全然違った状況になっているのでしょう。
「人生はビスケットの缶」という比喩にならえば、いいこととあまり良くないことが常に混在していて、それでも全体としては良い方向に進んできた感じがします。
むしろときどき失敗したり、その結果まわりみちしたことで、それなりの生きる術を見つけられたようにも思います。
最近、自分のまわりで、これまで順風満帆に進んできた(ように見える)人たちが、今になって歯車がちょっと狂ったことでスランプに陥ってしまう、そういう話をちらほら聞くたびに、「生きていくのは簡単じゃない」ことを感じます。
心理学者アルバート・エリスは'Nothing is awful!'(人生に八方ふさがりはないんだ)と言ったそうですが、思い悩んだとき、いつだって様々な可能性、選択肢があるのだとこころに留めておくことは大事でしょう。
自分で一方的に「これしか方法がない」と限定してしまっては、自らの手で可能性を殺してしまうだけです。
これは人生訓というよりは、ある種の「真実」だろうと思います。これまで順調だったことがその後の人生を保障するものでもない、またこれまでが良くなかったことで今後もそれが続くわけでもない。いつなんどきも、人生にはあらゆる可能性が(良いことも、悪いことも)潜んでいるはずです。
「人生とは…」ということで言えば、7,8年ほど前にアカデミー賞を獲得した『フォレスト・ガンプ』の中で、フォレストの母が息子に言ったことばが頭から離れません。
"Life is like a box of chocolates, Forest. You never know what you're gonna get"
(フォレスト、人生はチョコレートのつまった箱のようなものよ。これから何を得るかなんてわからないんだから)
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ただ、この「わからない」という不透明な状況を、恐怖に感じるか、それとも楽しみに感じるかによって、180°違ったものになってしまうのは確かです。要は「気の持ちよう」でしかないのでしょう。
それにしても「チョコレートの箱」(日本によくある200円くらいの、上品な小さな箱にきれいに1ダース並べて入ったものを想像してはいけません。アメリカやイギリスのスーパーでよく売っているバケツみたいな形の大きなチョコレートボックスです)というのは、何だか楽しいことがこれから起こりそうで、夢があります。
カラフルな柄の大きなチョコレートボックスに手を突っ込んで、次はどんなかたちのチョコレートが出てくるかドキドキするような気持ちで、どうせわからないなら「楽しいことがやってくる」という期待をもっていければいいのです。