宮本先生の退官によせて

イギリスにいるため参加できませんでしたが、先日洛南高校吹奏楽部顧問の宮本輝紀先生の退官記念パーティが行われました。宮本先生には僕も高校時代はもちろん、大学へ行ってからも、洛南高校が全国大会に出場するたびに、東京での練習会場を探したり、説明会に代理で参加させていただいたりして、いろいろ貴重な経験をさせていただきました。

洛南高校吹奏楽部と宮本輝紀先生については、宮本先生の退官にあわせて発売されたDVD「この素晴らしい世界vol.4」の紹介文が端的に表していると思うので、以下に引用してみます。

この素晴らしい世界 vol.4 [DVD]

この素晴らしい世界 vol.4 [DVD]

在職中、洛南高等学校吹奏楽部をコンクール全国大会常連校(14回出場、金賞4回・銀賞10回)にするなど日本を代表する高校バンドに育てる。強烈なインパクト与える『洛南=宮本サウンド』は、多くの聴衆を引きつけ、記録以上に長く記憶に残る希有なバンドといえる。一人で多くの楽器を持ち替えながら演奏するスタイルも独特で話題となった。関西はもちろんのこと日本吹奏楽界の発展に多大に貢献した名指導者である。

僕にとって最初の洛南高校吹奏楽部との出会いは、僕の中学も参加したある音楽祭で洛南高校のリハーサルを聴いたときでした。金管楽器奏者がフルートに持ち替え、ホルンのファンファーレで始まる「ローマの松」(その後のコンクールで全国大会銀賞受賞)の演奏に、それまで自分が持っていた吹奏楽のイメージからは全く想像できないような強烈なインパクトを受けました。その瞬間の映像、そこから受けた興奮は15年以上が経った今でも鮮明に記憶しています。そして、その瞬間から洛南高校吹奏楽部に入ることが目標となりました。

洛南高校では、2年生の時に「華麗なる舞曲(ダンス・フォラトゥラ)」で全国大会金賞を受賞して喜んだこと、翌年3年生として望んだ関西大会では代表になることができずアルカイックホールで皆で泣いたこと、初めての海外経験としてハワイでの演奏会に参加したこと、そして何よりもそうしたコンクールやコンサートに向けて練習した日々、どれもが現在の自分の原型を形作る貴重な経験だったと思います。

もう卒業してから12年ほどになりますが、洛南高校吹奏楽部での経験が自分にとっていかに貴重であったか、もしそれがなければ全く違った人生になっていたとさえ思います。

ちょうど昨年の秋に日本テレビ「所さんの笑ってこらえて」の中で、洛南高校吹奏楽部が取り上げられた放送を、後にビデオで見る機会がありました。その時に驚いたことは、僕が高校時代にいた頃と、(良い意味で)全く変わらない高校生の姿があったことでした。

コンクールに向けてひたむきに練習する姿、その目の輝きは、12年が経った今も全く変わらないことを目の当たりにして、嬉しいと同時に、かつて自分がそこで経験したことがいかに貴重な時間であったことを今更ながらに実感させられました。

その番組が放送されたことは、演奏だけではなく、洛南高校吹奏楽部の日々の練習を初めて「客観的に」見ることができた、ということで自分にとっては貴重でした。そこから何よりも強く感じたことは、生徒一人一人の演奏に向かう高い集中力でした。貴重な3年間の経験から得られた最大の恩恵をあげるとすれば、まさにこの「集中力」に尽きるのではないかと思います。

多感な高校時代の3年間の大部分(文字通り1年365日)を、高い集中力を要求される環境にいたことは、多くの卒業生にとって何事にも代え難い貴重な財産になっているのではないか、「長時間持続できる高い集中力」、これがあればどんなことでも成し遂げられるのではないかと思います。

もうこれからは「洛南=宮本サウンド」を聴くことはできないかと思うと残念ですが、これからも僕の記憶の中では決して消えることはないでしょう。そして、もちろん、これからの洛南高校吹奏楽部の発展も心より期待しています。